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(なんか馬鹿馬鹿しくなってきたな・・・)
フェリアンはシィキとサイアのいちゃつく様を見てそう思うようになってきていた。
そして、「案内、有り難うな。あとは一人でぶらついてみるさ。」と、言ってゆたりと分かれたのが数分前になる。
「《我、”混沌”を感知する。》」
人気の無い路地裏でフェリアンは“真名”を宙に描き“言霊”を発した。先日の戦いで突然シィキの愛機ブレードから発した“混沌”をローエルが感知してからフェリアンは、この世界《アルフォース》自体に対しての警戒を緩めてはいない。あえてRRRの者にブレードの豹変について問わなかったのはそうした経緯からである。
「ビンゴ!!・・・と、いきたいんだが・・・弱すぎる。はずれか・・・」
“言霊“によってもたらされた“魔法”はフェリアンの認識能力を拡張し、カオティックアーマー(CA)クラスの“混沌”の影を彼に知らしめた。
(APMクラスか。放っておくわけにはいかないよなぁ)
「何だか良く解らないけど手厚い歓迎ね!」
なぜだか嬉しそうにアルティノはほくそ笑み、愛機ヴァルキューレ・ロートのコックピットに体を滑らせる。その間にベルのE−BRAKERは、疾風の如く加速しヴァリスゲイヤーの小脇を抜けカオティックアーマーに向かって駆けた。その手に持つDFライフルの先端は緑色に輝き今にもDF粒子のビームを発しようとしていた。
『先手必勝!!』
そう言ってベルがトリガーに指を掛けた瞬間、後方から激しい衝撃がベルとE−BRAKERを襲った。
「何しよるんじゃボケェッ!!」
カイが吠えた。そしてヴァリスゲイヤーの右脚がE−BRKERを蹴っていた。
『なっ、何を・・・』
「正体不明の相手だけぇゆっても、基本の対話を忘れてどうするんじゃ!これだけぇ野蛮人は・・・」
『どっちが野蛮人よ。だからSFSって・・・』
互いに罵り合うベルとカイ。そのやや後方で理解に苦しむ者が一人。
(あの、カイって人、さっきと言ってることが・・・)
アルティノである。そもそも“ぶちのめしてやる”と言い出したのは、カイではなかったのか。その当人が“対話を忘れてどうするんじゃ”である。
(まぁ、対話が基本ってのは認めるんだけど・・・)
アルティノの困惑をよそにヴァリスゲイヤーは一歩踏み出し、両腕腰に当て胸を張る。陽光が巨体を照らし、額の“もみじ”が輝いた。
「近くのものは目にも見よ。遠くのものは音に聞け。ワシこそはセトウチ=カイじゃ!聞こえとるんなら応えてみんか!ワシだって無益な争いはしとうな・・・」
ガシッ!!
カイの台詞が終わらない内に、カオティックアーマー“ゴブリン“の投げつけた巨石は、見事なまでにヴァリスゲイヤーの顔面に直撃した。
「間抜けね・・・」とはアルティノの談。
気を取り直したアルティノは愛機ヴァアルキューレ・ロートを起動させE−BRAKERと並進、加速する。
「周辺各機に告げる。こちらは、ジャン・クライフ研究所所属ASX004ヴァルキューレ・ロートのアルティノ=ワールシュタット。前方5機の未確認機はこちらに敵意を示しているものとみなす。これより迎撃行動を開始するが、意思あるものの協力を要請する。」
ヴァルキューレ・ロートのメイン動力、ブラックホール機関の出力係数は現時点で42.7%。出力低下は否めないが、戦えないという数字ではない。もっとも相手の強さにもよるのだが―――
「こちらは、グランドクロス所属E−BRAKER、ベル=ファ−シェス。了解しました。お互い頑張りましょう。生き残るために・・・あっ、通信チャンネルは1002でお願いします。」
「やつら、・・・わしがぶちのめしたる!!」
外部スピーカーで吠えるのはヴァリスゲイヤーのセトウチ=カイだ。
(どうやらあの2機とは戦わなくて済みそうね。)
未知の世界において一時的であるかもしれないが、味方ができたのはやはり心強い。そう感じたのはアルティノだけではなかっただろう。
「養生せぇやコラァ!!あぁ!?このボケがぁ!!」
ヴァリスゲイヤーの持つ巨大なライフルから“救命弾”が撃ち出された。一直線に飛ぶそれはカオティックアーマーの腹部に直撃し貫通した。救命弾は、人身保護装備であり、いかなる場合においてもその対象となったパイロットは救命弾の内部に保護することができる。しかしカオティックアーマーは無人兵器だった。
キュ。どん!!
と、ヴァリスゲイヤーはエンストした。またもや助手席のキヌガザ=サチヲによる教習−いや強襲であった。
「コラ、カイ。使用兵装許可申請願、わすれとる。」
あくまで冷静に“強襲”教官サチヲは言い放つが、カイも負けてはいないようである。
「そんなん戦闘中に に出来るわけ無かろうが!!」
「一点減点」
済ました声のその台詞はカイに痛烈なダメージを与えた。“仮免許”の彼にとってそれはまさに地獄からの呼び声に聞こえていた。
「くそったれ。わかったけぇ・・・」
カイは両肩を落とし、ため息交じりに言った。
使用兵装許可申請願:戦闘時に使用する兵装を目標および上官に報告すること。
要するに技の名前を叫べってことだ。
戦場は止まらない。E−BRAKERのベルはヴァリスゲイヤーの停止を全く意に介さず無数の光弾をカオティックアーマーに向け放っていた。
(以外としぶとい!?)
大気中ではビームの威力が低下する。大気によるエネルギーの散乱と吸収。それはふだんならば気になるような物では無いはずだった。ベルが考えられる可能性は一つ
「電磁コーティング!?」
違う。だが、その効果はこの場合においてほぼ同一のものと考えても良い。低レベルでの魔法結界。それは本来なら夜行性の“ゴブリン”が、太陽の下で行動するための対“光”魔法の一種であった。
「それなら!!」
ベルはパネルを素早く操作し次の攻撃にかかる。“ヴァインダー”から大型のキャノンを外し、それをカオティックアーマーに向けた。強力な光は、陰を消す。カオティックアーマーは光の中に消えた。
「光粒子(フォトン)兵器−か!?守護機以外で実用されてるなんて聞いてねぇよ!!」
《広域視覚》で“戦場”を《観て》いたフェリアンは驚いた様子を見せた。
(さて、APMをあの連中に任せといてやるのも気が乗らないが・・・Lo−Elはまだ動かしたくはないし・・・どうしたものか・・・)
そんなことを考えていたときだった。
「フェリアンさん、こっちです。」
声に振り返る。どうやら戦場に意識を集中しすぎていたらしい。そこにフェリアンはトリモグラーUの格納庫で見たことのある機体がこちらへ飛んでくるのを見た。
「だっせぇ〜」
正直なところその機体はフェリアンの美的感覚と対極に位置していた。目すらなく代わりにゴーグルのようなものが付いている頭部。粗製されたばかりの鉄板を張りつけたような装甲、ほかフェリアンに言わせればそのいくつ挙げてもきりの無いくらい悪く言ってくれたに違いない。
「このDRに乗ってください。言霊を使える貴方なら扱えるはずです。」
コックピットハッチから半身を乗り出してそう言っていたのは確かロイとかいう整備員だったか。
「そいつに乗るの?俺が?」
「ローエルとは勝手が違うと思いますが、貴方なら出来ます。」
どうしたものであろうか。このとてつもなく格好悪い機体に乗るのは気乗りしないのだ。だが、Lo−Elが完全ではない以上APMに対抗するにはほかに方法はありそうにない。
「仕方ない。やってやるよ。」
コックピットに移り、操作系を確認する。以前トリモグラーUで、やったシミュレーターと大差は無いようである。
「で、お前さっき言霊がどうとかって言ってなかったか?」
「はい。DRの起動とフライトユニットの制御には“竜法”、つまり疑似的な言霊を用いるのです。つまり言霊そのものを使う貴方・・・」
「OK.大体解った。あとは適当にやってみるさ。じゃあな。」
ロイの説明を半分聞いたところでフェリアンは彼をコックピットから蹴り出した。
「うわっちっ」
哀れな整備員は、地面に叩き付けられるところであったが、背中に発現した翼によって事亡きを得た。彼も又ハヤテと同じく勇翼人であった。
一方コックピット内のフェリアンは早速DRに“仕掛け”を施す。
「まずはお前に銘を与える。いつまでも複製品(レプリカ)じゃ本家には勝てないからな。」
「《汝の名は、DR(ディーアール)。ドラグーンリファイン(再設計)を意味する。》」
これで、DR(ドラグーンレプリカ)は単なる複製品(レプリカ)の域を超え、再設計(リファイン)としてのスペックを得たことになる。この手法はエレンティアで一般的に行われる魔法付加の応用であり、本来ならば一部の例外を除いてMA(ムーバブルアーマー)のような(ここでは機甲兵器であるが)複雑なものに用いられることはない。性能を極限を超えて引き出すこの手法では、対象に大きな付加を与えることになり、最悪の場合それは二度と機能しなくなる危険性を秘めているのだ。
そんなことは百も承知のフェリアンだが、特別の愛着のある機体でもないので気にしない。「さて、次は・・・」
今度は操作系に《擬態》(エミュレート)を施す。機甲兵の一般的なコックピットが変化しフェリアンのよく知るMA(ムーバブルアーマー)の物に《変わる》。ちなみに先に書いたトリモグラーUでのシミュレーターで最高得点をマークした時も彼はこの手法を使っていたのだった。
「準備はこのぐらいかな。じゃあ、いくぜ!」
DRのゴーグルの奥で双眼が光り、背中のフライトユニットに光が灯る。
フェリアンはDRを駆り、戦場へと飛んだ。
その頃戦いの“気”を感じハヤテはRRRの基地へと戻っていた。
「何だって!?このまま戦えって言うのか?」
格納庫にハヤテの大声が響いた。
「そう大声を発てなんでも聞こえて居るわぃ。」
技師ドルトレスの説明によればハヤテの機体グランバスターは整備中であり飛行形態のグランウイングのまま変形することができないらしい。
つまりはほとんどの兵装を封じられたまま戦わなければならないのだ。
「チィッ、仕方ない。その代わりといってはなんだが、ブレードを持っていく。シィキにそいつを届けてやるぐらいは出来るだろ。」
グランウイングの足でが、ブレードの肩を掴み発進の体制に入った。
町の西側に広がる牧場の緑が左右に分かれその下からブレードを掴んだグランウイングが発進カタパルトと共にせり上がってきた。
「ハヤテ=アシュフォード。グランウイングにて、いざ、参る!!」
風を切る音と共にグランウイングは大空へ飛び立っていった。
それを見るドルトレスはこう呟くのだった。「はて、シィキとか言ったか。またアレに乗ってくれるじゃろうか・・・」
と。
「前方向安全防御シールドW・I・P・E・Rぁぁぁっ!!」
「自立戦闘端末駆動ファミリアじゃー」
戦場にセトウチ=カイの声が轟く。CA“ゴブリン”の攻撃をW・I・P・E・Rが防ぎ、ファミリアは、そのヘッドライトから発射される“High Beam”で多角的にCAを翻弄する。
「トドメじゃ!!
廣島精霊師帝都死邪剣!!」
高く掲げたライフルの銃身から伸びる一筋の光の刃が一気に降り下ろされた。
「フン。どんなもんじゃい!!」
友愛を伝えるべくして造られたマシン、ヴァリスゲイヤーには似つかわしくないこの“邪剣”は、CAを縦一文字両断した。振り向き次の目標へと向かうヴァリスゲイヤーの背後でCAは爆発を起こし四散した。
「伊達に大きいわけじゃなさそうね。けどアタシのヴァルキューレ・ロートだって・・・」
この時点での撃墜数は各機共に一機ずつ。残る敵はカオティック・アーマー“ゴブリン”が2体。
「プログラムナンバー1159オープン」
ヴァルキューレ・ロートの左腕シールドから柄を取り出す。その一端から伸びるエネルギー伝達ケーブルを本体のエネルギー供給口に接続する。
「第三次接続までオールコンプリート。各部共にエラー無し。グラビトンソード、展開!」
柄の他端から透明な刃が形成された。その剣はまるで焦点の合わない虫眼鏡のように反対側の景色を反転し見せている。
グラビトンソード。その名が示す通り、それは高密度有指向性重力子で形成される剣である。
「たぁぁぁ・・・っ!!」
降り下ろされたグラビトンソードの奇跡の空間が裂け、ヴァルキューレ・ロートと対峙していたカオティックアーマーは風船が萎んで行くかの如くその身を潰されながら空間の裂け目に落ち込んで行き、消えた。
「目標の消滅を確認。あと一体ね。」
このときアルティノは、まだ自分の愛機に起こりつつある異変に気づいてはいない
「おっ。居た居た。」
グランウイングのコックピットからシィキとサイアを発見したハヤテは早速彼らのそばに機体を着陸させた。
「シィキ!南西で戦闘だ!!早くブレードに乗んなっ。」
「・・・・」
シィキは下を向いたまま何かを呟いたように見えた。
「何だ!?早くしろって。」
様子がおかしい。
シィキの眼前にはかつて自らが駆った機甲刀神ブレードその巨体を膝まづかせている。
「自分は・・・乗れない。その資格がない。人を殺すのももう沢山だ。自分は・・・」
両のひざを地面につけ、肩を抱えて震える。何かに脅える子供のようなシィキ。
「しぃき?君、何言ってんの?そんなの全然君らしくないよ。」
顔を覗き込もうとするサイアにさえ彼は背を向けてしまった。
「君には分かんないんだ!!」
ごん。
サイアのげんこつがシィキの脳天を打った。
「シィキの馬鹿!!弱虫!!何が“わかんないんだ”よ!君がやらないんだっったら私が乗っちゃうんだから。」
声に振り向くシィキをよそにサイアはブレードのコックピットに乗り込みハッチを閉じた。。
「えっと、通信パネルは・・・あった。これこれ。」
ハヤテのグランウイングとの回線が開きそこに彼の顔が現れる。
「って訳で私が出ることになったから。よろしくねハヤテ君。」
ハヤテの目が点になった。
「ちょ、ちょっと待て。いきなり“って訳で”とか言われても何のことだか分からないぞ。大体シィキの奴はどーしたんだ?」
額に手を当てて少し考える仕種をしたサイアだが次の台詞はこれだった。
「んーっと。面倒臭いから後で教えてア・ゲ・ル&hearts。男が細かいこと言ってちゃ大成しないよー」
「ん?そういうものなのか?」
「そーいうもんよ。」
どうやらハヤテはサイアに説得・・・いや丸め込まれてしまったらしい。ハヤテはどうもこの手の性格には弱いようだ。ハヤテ曰く「ミカゲ(ハヤテの妹)と重なっちまうんだ」との事。
「はっしーん!!」
いつの間にかグランウイングの背にのったブレードのコックピットからサイアが叫んだ。グランウイングはブレードを乗せよろよろと飛び立ったのだった。
何故・・・? どうして・・・ 戦うんだ・・・ |
シィキは立ちつくす。
「おいおいマジかよ。デタラメだね。」
戦場におけるフェリアンの第一声はそれだった。エレンティアにおいて人型兵器のサイズは大きくとも二十数メートルが普通である。それ以上の大きさになると“鎧”と“人”の概念で制御できないのが理由だ。その意味合いで全長86メートルのヴァリスゲイヤーはあまりに巨大でありフェリアンには理解の範疇を越えていたようである。
「何じゃ、何か文句でもあるんか」
通信回線が開いていたらしくセトウチ=カイから苦情の通信が入る。
「すまねぇな。悪気はない。」
売られた喧嘩は買うのがフェリアンの信条なのだが今回は未知の性能の機体に乗っている上、APM排除の目的を優先させたかったのでとりあえずは友好的に接した。
「アルティノさん、どうしました。」
ベルからの通信がヴァルキューレ・ロートにはいる。
アルティノの愛機はメイン動力機関であるブラックホールエンジンを停止させていた。先のグラビトンソード展開による機関への負荷の影響と思われるが、詳細についてはアルティノ自信にも良く分かってはいない。ステータスモニタには
BLACK−HOLE−ENGEN POWER LOST |
の文字が、点灯するだけである。
「大丈夫・・・だと思うけど、ちょっと今までみたいにはいかないみたい。後は、任せても良いかしら?」
「ええ。でもその必要は無くなったみたいよ。」
「バイバイ」
ちょうどその時フェリアンの乗るDRの剣がCAの核(コア)を貫いたところだった。それはCAの知識をもつフェリアンならではの一撃必殺であった。
「お前、意外とやるじゃん」
フェリアンはDRに語りかけた。
「おれはフェリアン。こいつらカオティックアーマーとはちょっと因縁があってな。4つも潰してくれてみたいなんで一応礼を言わせてもらう。」
「敵意なし、って思っていいのかしら?」
「多分な。アンタ等の機体もここの物じゃないようだが、ひょっとして迷子なのかい?」
「迷子・・・まぁ、そんなものでしょう。」
「もうすぐこっちでの仲間が来る筈になってるけどもし良かったら一緒に来ないか?お茶ぐらいなら飲ましてもらえると思うぜ」
「未確認機体接近中。南方から5。」
E=BRAKERの索敵レーダーは新たな敵影を捕らえていた。
「仲間ってあれのこと?」
「いや、あっちのほうだ。」
アルティノの問いにフェリアンのDRが指さしたのは北東側からの二機。グランウイングとブレードである。
「ALTe−Do!!何でこんな処に!!」
通信に割り込んで、と、言うかむしろ嫌でも聞こえてくる外部スピーカーからの声はカイのものである。
「なんだ?アンタ知り合い?」
「しらん。機体をしっとるだけじゃ」
「コンタクト・・・とってみたほうが良いみたいね」
ベルは言うが・・・
「何だ?目が悪いんか?」
説明の必要はないと思うが、カイの言うコンタクトは視力矯正用のレンズのことであり、ベルの意図していたものではない。
「貴方・・・馬鹿?」
思わず呟くベル。
「何じゃワレ!ワシに喧嘩売っとんのんか!!」
通信はカイに届く。
「はい、そこまで。まずは“基本”でしょ?」
怒るカイを制したのはアルティノ。不思議とカイも彼女の意見には逆らわない。
「アルテード!!降伏するなら命まではとらん!!降伏せぇ!!」
ヴァリスゲイヤーが吠える。その内容はかなり一方的だが、そんなことを気にするようなカイではない。ALT−EDOという機体によほど悪い思い出でもあるのか。
そう。有るのだ。OBのマーキングのあるこの人型戦闘駆動は、2099年、つまりカイの時代、地球各地に起こった紛争に必ずといって良いほどその姿を見せていた。しかも一体や、2体ではなく、それこそ群れるようにゾロゾロと・・・戦闘力はヴァリスゲイヤーとは天と地ほどかけ離れていて(この場合、天は当然ヴァリスゲイヤー。)倒すのに苦労することはなかったのだが、数が数だけに鬱陶しいのだ。
「悪いな。もう前金はもらっているのでな。仕方ないから戦おう。!」
ALT=EDO一番機のパイロットである“彼”はそう答えた。その姿は2099年の人間の着衣ではない。アルフォースのものだ。おそらく傭兵家業のものではないだろうか。戦いに挑むものの言葉にしてはいささか軽すぎる。それは“彼”が普段から戦いに身を置いている証拠であり、また、その口調は国家の兵士のものではない。
そして戦いは始まった。
結果は見えていた。
ALT=EDOのスペック自体がヴァリスゲイヤーのそれと比べ圧倒的に劣るものであることは前述した。当然のことながらそれより後の時代の産物であるヴァルキューレ・ロート,E−BRAKERは、ALT=EDOのスペックの比ではない。加えて、アルフォース人であるパイロットの腕前は、素人の一言。
見えていた結果とは・・・