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友愛伝機 ヴァリスゲイヤー

〜第X話 神子のある一日=`

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シーン3
 合格発表用の掲示板の前で神子は津田さんにおごってもらったコーヒーを飲みながらその発表を待っていた。
 隣に座っている津田さんが相変わらずリュックをごそごそしながら神子に語りかける。

「そんな心配すること無いよ。合格間違いなしなんだからね」


 その言葉にもしやと思い神子は素早く津田さんの肩を掴んで強い調子でたずねた。

「もしかして裏で何かしたんじゃないでしょうね?!」
 神子のその真剣な問いに津田さんは思わず吹き出す。が、慌てて謝る。

「ごめんごめん、そんなことしてないよ。そんなことしたら貴方折角やってくれるモニターも断りかねないことも調査済みなの」


 笑いながら傍らに置いていたリュックに手を伸ばし、例の分厚い本を取り出し開いて見せる。
 分厚い本に思えたそれに津田さんが軽く触れると真っ白な紙に文字が浮かび上がってきた。

「なんなのそれ!?」


 少し微笑を浮かべながら得意げに津田さんはページを捲っている。

「んん?こう見えてもパソコン。ちょっと待っててね」


 そう言いながらページを捲る手を止めたかと思うと神子の前に突き出した。
 其処には神子の幼少の頃から現在に至るまでの事細かなプロフィールが書き出されており、性格の分析、友達の評価など普通ではわからないようなことまでかかれていた。

「な・・・何?なんでこんなことまでマ・・・・」


「マツダの情報力なめてもらっちゃ困るね」


 口を開いた神子を制するように言葉を捕ると、津田さんの言葉を次いだ。
 一瞬チラッと津田さんが25歳ほどの大人の女に見えた・・・が、次の瞬間にはもういつもの屈託の無い笑顔を浮かべ、パタンとパソコン(?)を閉じると神子の不安を払うように明るい感じで喋る。

「貴方がどんなに頑張ってるか知ってるよ。大丈夫、短い時間だったけど貴方ならきっと受かってる」


 その言葉に神子は照れながら俯いて微笑う。
 と、そのとき放送が流れ神子はスピーカーのほうを向いた。
    ―――――――――合格者の発表を始めます。受験者は電光板の前に集合してください。―――――――――
 緊張が走り俄かに静寂が流れる。
 電光板が光った!
 わっと辺りが沸きあがる。
 神子は自分の番号を探し目を走らす。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あった!
 思わず津田さんに抱きつこうとする・・・・が、宙を空振る手、津田さんがいない。
 神子が辺りを見回そうとしたした時、

「ぱんぱかぱーん!!おめでとうこれで晴れてヴァリスゲイネに乗れるよ!」


神子の頭上でくす球が割れ紙吹雪が舞う、中の垂れ幕が神子の頭にコンッと当たったが気にならない。
 神子が振り返るとくす球のついた棒を持った津田さんがいた。

「ね!あたしの言った通りでしょ。絶対合格すると思ってたよ」


「津田さん・・・」


 神子は少し目に涙をにじませながらくす球の垂れ幕に目をやる。
   ====残念!気を落とさずにね!====

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・津田さん?」


「ん?何?」


 神子がチョンチョンと垂れ幕を指差す。

「あぁ!こ・・・これは不合格ように作った・・・」


 慌ててリュックにくす球を引っ込め中を大急ぎでかき回す。

「あ・・・・あった。これこれ!」


 また新たなくす球をリュックから取り出すと棒の先につける。

「つ〜だ〜さ〜ん・・・」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
 地鳴りを立てながら津田さんを見上げる神子、並みの迫力ではない。
 後頭部の紅葉髪が炎のように揺らめき、その周りで火花がバリバリバシィッン!と弾けひしめき合っていた。
 他の受験者は関わり合いになるのを恐れてか既にその姿は無い。
 炎のストッパーと呼ばれる彼女もこのときばかりは笑って誤魔化すしかなかった。

 紅葉の様に赤い夕暮れの中、津田さんは無言で車を走らせ続ける。

「これからどこに行くの?」


 神子が尋ねる。
 津田さんは信号で車を止め神子のほうに振り向く、眼鏡にひびが入っている。

「エバに行くの。マツダの秘密地下工場でヴァリスゲイネが待ってるわ」


「待ってる・・・・・」


 神子が呟く。やがて信号が青になると津田さんは前方に目をやった。
 後頭部の大きなたんこぶが痛々しい。

 市電沿いに車を走らせると終着駅、

「江波」

が目に入った。
 突然、津田さんは市電の線路上に乗り上げる。

「ちょ・・・な・・・!どうするつもりなの!」


 神子が尋ねるが津田さんは答えない。
 やがて、江波駅に乗り込むとそのまま電車庫に突っ込んだ。
 神子は頭を押さえて伏せる・・・がシートベルトで伏せられ無い。

「きゃああああぁぁ・・・・・ってあれ?」


 何の衝撃も無い、すっかり車庫の壁にぶつかったと思っていた神子は頭を上げ辺りを見回す。
 辺りは暗く静まり返っていたが夜になった等という事ではないのはなんとなくわかった。津田さんは相変わらず車を走らせ続けている。

「どこ・・・ここ・・・」


 真っ暗な中、車が止まる。津田さんがこちらの方を向き少し笑うと、床が動き車ごと地下に導きいれていった。
 はるか下方に光が見える。津田さんの眼鏡がぼんやりと光を反射すると、その奥にあるはずの瞳が妖しく光を放っているように見えた。
 下からの浮き上がるような光に包まれながら、津田さんが神子の問いに答えた。

「ふふ、言ったよね。「秘密工場」だよ」



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