覇王戦争を読む
銀河の中心近くに在るサナトス星系の第三惑星として生まれたこの惑星は地球に非常によく似た環境の星ではあるが、大きな違いが一つある。それは、陸地と呼べるものがほとんど存在しないこと。惑星表面の99%を占める海洋では、やがて原始の生命が誕生し、進化を遂げていった。やがて脊椎動物が姿を見せはじめ、生態系も多様化の一途を見せた。
ちょうどその頃のこと。人口増加や戦争によって環境破壊の進んだ地球からの移民船団がこの星系にたどり着いたのである。西暦に換算して2500年頃のことであった。
地球からの移民団は惑星の衛生軌道上に無数の居住区(スペースコロニー)を建造し、そこを基盤生きていた。コロニー建造の資材は第4、第5惑星から採掘し、惑星アルフォースそのものにはほとんど手を加えない。これが故郷地球を汚したことの教訓から学んだ結果のはずであった。
それから数百年の後、一つのコロニーの寿命が尽き、惑星へと落ちた。これをきっかけに自らの大地が永遠のものではないことに気がついた人々はより新しいコロニーへの移住を求め、その狂気にも似た衝動はついには戦争にまで至ることになる。
戦争は、次第に拡大し、その間にも多くのコロニーが沈んでいった。
戦争は終わった。多くの命を犠牲にし、ほとんどすべてのコロニーが沈んだ。
地球発の文明の終結である。降神暦0001年。後にそう呼ばれる年のことであった。それからどれほどの時が流れたのだろう。かつてコロニーと呼ばれたものが大地として惑星アルフォースに根づいた頃、生き残ったわずかな人々の末裔達はこの大地の上で新たな文明を築きはじめていた。
新たなる文明は、中世のそれとほぼ同じレベルまで発達した。
降神暦1000年前後のことである。そんな中、人々の中から特別な力を持つものが現れ始めた。
彼らはネオジェネレーションと呼ばれ、次第に力を持たない人々を支配するようになっていった。ネオジェネレーションのもつその特別な力は、後に“魔法”と呼ばれるようになる力と同質のものであり、その源は“混沌”にあった。“混沌”は、世界の変化を促進する因子である。かつて地球に於いてもそれは、影響を及ぼしており、その顕著な現われは世界各地の神話の怪物、そしてノストラダムスたち予言者の存在に他ならない。
惑星アルフォースにおいてこの力は、地球でのそれよりはるかに強い形で現れた。それは、この惑星が銀河中心部より比較的近い位置にあることに起因している。銀河中心は巨大なブラックホールと言われているが、この重力場の歪みこそが『混沌』そのものであると考えるものも多いという。
ネオジェネレーションによる人々の支配はもっとも混沌の力を強く受けていた『カオスオブクィーン』を中心にして行われ、力を持たない旧人類を虐げていった。
それから葯100年後。空間のひずみの為か異世界より英雄が現れることとなる。“星の戦士”彼らは完全調和の世界よりの旅人であり、『言霊』による魔法にも似た能力を用い、混沌の勢力と戦い、勝利した。星の戦士については現在まで分かっているのはそれだけである。
覇王戦争へと続く