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「ワタシガ、イコウ!、長官」
セノの家を飛び出したセイバーは,ウール100%王国の宮殿を目指して走っていた。
「・・・?」
なぜ宮殿に行かなければならないのか。自分が行くべきところは、戦場のはずではないのか?
自問自答を彼の頭脳にあたる"AI改"で行った後、いきなり振り返り、今までと反対の方向へと飛び立った。
「時間ガナイ!」
セイバーは,疾風のような早さで,一路戦場を目指して飛んでいった。
「"AI改"にチョット問題があるようですねぇ…」
セノは、すっ飛んでいったセイバーの姿を見ながらボソリとつぶやき、ため息とともに肩を落とした。
そのころ,街の外では,いまだにミスティル達は苦戦を強いられていた。
「ミスティル,たすけてよぉ〜」
潔い声が,ミスティルの耳に飛びこむ。
「何を情けないことを言ってるの,グレイ!?ここを突破されたら,あっ…ダメ!?」
愛機レズテイルで,攻撃の手を緩めずにミスティルが言い放つ。
「ぎゃーぎゃーわめくんじゃねぇ、ガキがぁ!」
グレイとは別の男性の声。かなり荒っぽい。
「もうすぐ,援軍が来るはずよん♪,ガンマ」
・・・実際,援軍が来るかどうかは賭けだったのだが,敢えてそれは言わずに檄を飛ばす。
「あと10分・・・いえ,せめてあと1ミリ秒は持ちこたえて!」
祈るような心持ちで,ミスティルは言った。
(勝手なこと言わないでよ。怪我するのはアタシなんだから…)
レズテイルは、密かにディスプレイに文字を浮かびあがらせていた。
相変わらず,戦況は芳しいとは言えなかった。しかし,いまだ劣勢ではあるものの,敵の数はあと4機というところまで,その戦力を減じていた。とはいえ,ミスティル達のほうも,限界に近かった。
「・・・援軍はまだなんですか!?」
またも汚物を吐くグレイ。と,不意に衝撃がグレイを襲う。
「うわっ!?」
どうやら,敵の砲撃が当たったらしい。機体の損傷が痛みとしてグレイに伝わる。
「グレイ,大丈夫!?」
慌てて,ミスティルが駆けつける。
「大丈夫・・・まだ,いけるよ!」
精一杯の強がりを放つ。実際は,機体も操者も限界に近かったのだが,これ以上退くことはできなかったのだ。
「あーうっとうしい!?」
苛立った口調で,ガンマは、誰にともなく叫んでいた。
「みんな,あせっちゃダメよ・・・お楽しみはこれからですわ・・・」
ミスティルは,自分にも言い聞かせるようにそう言った。
「そんな事言っている場合ではないのではなくて?」
さめた声が、コックピット内に響く…レズテイルの声である。
敵の攻撃は,いまだ衰えない。もはや,それを防ぎきる気力は,誰も持ち合わせてはいなかった。(これまでなのか・・・?)
誰もがそう思ったとき,「それ」は,まさに風のように現れた。
「何をしているのです!こんなところで諦めるとは・・・情けない方ですね…」
「なっ,てめぇ!?」
さすがに,トウガの言い方に,ガンマが怒ったらしい。が,そんなことを気にしている余裕はない。
「口だけじゃなく,ブレイブフォースしろよ!おめえ、勇者だろ?!」
「私に命令できるのは私自身だけです。」
ガンマは,気力をおとし,トウガと対峙する。
「あらセイバー、トウガ様は!?」
がっかりしたようなミスティルの声。
「話は後です。それより,こいつらを倒すのが先ではないのですか?1人1機・・・まあ、あなたたちには無理でしょうね。」
トウガは,敵の数を確認すると,すかさず訊いた。
「言われなくとも,やったるって!って言うか、おめぇは戦わないのか?」
これはガンマ。
「ええ,わかりましたはトウガ様ぁん」
と,ミスティル。
「・・・うん!」
グレイも,この案に応じた。
「よし・・・各機散開・・・行くぞ!!」
反撃の狼煙は,今あげられたのである。
ガンマは,自らの機甲勇者に向けて,
「もう少し,がんばってくれや・・・マックスバトラー!」
と,激励の声をかけた。
「シカタネェナァ」
だるそうに彼の愛機は答えた。
ガンマの愛機マックスバトラーは,真紅の機体で,どことなく,甲冑というよりはドリルのようなイメージを受ける。またそのフォルムからは,どことなく怒れるオッサンのようなイメージも見受けられる。
敵機を補足したガンマは,左腕の火縄銃を撃ちつつ,間合いを縮めようと敵機に接近する。しかし,敵もそう簡単には懐へと入らせてはくれない。何とか牽制しつつ,敵に少しづつ近づく。マックスバトラーは,近接戦が主体な機体なので,相手に近づかないことには,その真価を発揮できないのである。
ようやく,近接戦に持ちこめる間合いに入る事ができた。マックスバトラーは,左手首から,一本の筒を取り出した。次の瞬間,筒の先端から,光の竹槍が現出した(なんじゃそら?)。機甲勇者の基本武装である,竹槍である。
さすがに敵も,この間合いでは砲撃はできないと判断して,竹槍を抜く。敵の機甲勇者は,ごつごつしている感があり,どことなく無骨な感じを受けるが,決して,弱そうにも見えなかった。竹槍を構えるガンマにも,緊張感が走る。「おっしゃぁー!そんじゃ、行くぞ!」
一吼えして,マックスバトラーが地を蹴った。正面からグレイ違いざまに一合,竹槍を交える。思ったよりは,敵は近接戦には強くないらしい。衝撃でバランスが崩れていたのだ。かといって,油断していると,こっちの身が危ないということを熟知しているガンマは,あくまでかっこよく敵を墜とすことを考えていた。しかし,マックスバトラーの状態を考えても,長引かせるのは不利だったので,ガンマは,次の攻撃で墜とす覚悟を決めた。
「行くで!」
またも吼えて地を蹴る。今度は,相手の左側・・・竹槍を持っていない方から回りこんで,牽制のため,胸部のパチンコを撃つ。敵は,パチンコダマを何とか回避し,マックスバトラーの左側に回りこんでいた。しかし・・・
「甘いんじゃあねえのか?!」
ガンマは,その動きを読んでいたのだ。マックスバトラーの左腕の火縄銃を,敵に向けて放った。至近距離からの砲撃は,こちらの機体にもダメージが来るのだが,そうも言ってはいられなかった。勝ち誇ったかのように竹槍を持ち上げていた敵の機甲勇者は,その頭部を吹き飛ばされ,その場に崩れ落ち,そのまま動かなくなった。
「さて・・・ほかの仲間の救援に行っとくか・・・ほんとは帰って酒を飲みてぇんだけど」
もはや,まともに戦闘ができる気分ではなかったのだが,それでもガンマは,仲間の元へと急いだ。
「ガンカイザー・・・頼むよ!」
グレイは,自分の愛機にそう呼びかけた。
「了解だよ。勇者のグレイ君」
意志を持つ彼の機甲勇者は、巨大な機体とおもえないくらい幼い声で答えた。
ガンカイザーは,茶色に輝く機体で,特徴となるのは,そのかたに装備されているキャノンだ。異様に大きくてそのために近接戦闘には向かない。「あと1体・・・それで終わりだから!」
体の痛みが未だに残っている状態なので,正直戦闘に堪えられる状態なのかも難しいところではあったが,この際,そういうことは言ってはいられなかった。最後の気力を振り絞り,戦闘に臨む。
敵が近づいてくる。正直,ガンカイザーは後方支援機なので,近接戦には向いていない。しかし,あと二撃を放つぐらいしかできないような状態だったので,確実に仕留めるには,もう少し敵をおびき寄せる必要があった。敵の砲撃は,いまだやまない。しかし,ガンカイザーは物陰に隠れていることしかできなかった。「来い・・・もう少し・・・」
慎重に敵との間合いを測る。少しでも判断が間違えば,そこで終わってしまうからだ。
敵は,さらに砲撃をしながら近づいてくる。「今だ,行けっ!」
「了解!グレイくん!」
ガンカイザーから,石がばら撒かれた。石は,敵にかなりのダメージを与えはしたものの,致命傷には至らない。グレイは,竹槍を抜き放ち,敵機に突っ込んで行った。石によってダメージを受けていたためか,敵機の反応が鈍った。
「うわぁぁぁぁ!」
ガンカイザーの竹槍が疾る。慌てて回避運動を試みるが,もはや間に合わなかった。敵機は,胴体を突き刺されていた。グレイは,辛くも敵を沈めることに成功した。
「・・・やっと倒せたか・・・さて,次は・・・いるのかな?」
もはや,動くことも難しい愛機のコクピットで,グレイは溜め息混じりに呟いた。
「気を抜くと死んじゃうよ、グレイ君」
人事のように幼ない声でガンカイザーは答えた。
「レズテイル・・・あと一息・・・お願い・・・」
愛機レズテイルに祈りを込めてささやく。レズテイルは,紅紫色に輝く機体で,マックスバトラーやガンカイザーなどと比べて,曲線的なフォルムを持っていた。どこか,女々しいイメージすらある,そんな機体である。この機体は,遠・近ともに戦闘・防御能力が優れているため,マックスバトラーやガンカイザーほどは損傷してはいなかった。それでも,全開で闘うにはつらいのだが。
とにかく,全力が出せないので,森の中に隠れて,敵の動きを待つ。敵は,一向に近づく気配がない。距離を置いて,砲撃を繰り返していた。「近づく気配がない・・・こーんないい女をほっとくなんてホモね…やはりこっちからいかないとダメかしら?」
意を決して,敵に近づくことにした。砲撃の間を縫うようにして,少しづつ敵機に近づく。
「んもぅ、そんなに責められたら…あんっ!?」
砲撃を回避しつつ,毒づく余裕があることに気づき,少し気が楽になった。しかし,気を緩めてはいない。
「これなら・・・どうっ!?」
何とか,攻撃の間合いに入ったミスティルは,牽制のため,左腕のウォータガンを放つ。うまくかわされるが,その分間合いを詰めることには成功した。続いて,機甲勇者を操作する。
「だめねぇ〜!もう一度っ!」
再び,ウォータガンが水を吹く。今度は直撃し,敵機の腰部にある動力炉を破壊した。そして,敵機は爆発した。爆発の衝撃が,レズテイルを襲うが,たいした被害はなかったようだ。
「ふぅ・・・セイバーは大丈夫かしら・・・?どうでも良いけど。」
ブレイブフォースしていないため他の機体より二回りも小さいセイバーであったが,自分でも驚くぐらい,巧みに戦っていた。
「セイバー・・・意外とやりますね。」
トウガは珍しく他人?を誉めた。
セイバーは,竹槍を抜き敵機に向かって突っ込んで行った。敵機は,こちらに気づいたか,竹槍を抜いて応じてくる。「そうでなくてはな・・・こちらとしても,面白くありませんね。」
トウガは,不敵に笑みを浮かべた。どうせ他人事なので,トウガの心は踊った。
「いくぞ!!」
一度間合いをあけ,セイバーが竹槍を横凪ぎに振る。それも受け止められ,セイバーの竹槍が弾き飛ばされる。
気がつくと,敵は背後に回って,竹槍を振り上げていた。「くっ、くっ、くっ…」
何とか身を捻ることで一撃をかわし,カウンターに右の拳を敵機の頭部めがけて放つ。手応えを感じ,セイバーは向きを変え,さらに追い討ちをかけていく。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
右の肘打ちから,裏拳,左の正拳,左の中段廻し蹴りと,機械の動きとはとても思えない動きで攻め立てる。敵機は大きく吹き飛ばされ,地面に倒れる。とどめを刺すために,セイバーは敵機に駆け寄る。
と,不意に嫌な予感がして,その場を飛び退いた。目の前で,いきなり爆発が起こった。どうやら,倒れたまま砲撃をしてきたらしい。
「あのような不利な体勢で・・・なかなかやりますね…」
などと毒づくトウガ。またも敵機に近づくセイバー。今度は砲撃はないらしい。とどめを刺そうとしたとき,
「ブレイブ・フォース!!」
トウガは確かにそう叫んだ。
セイバーの動きが一瞬止まり、そのアイカメラが赤く光った。そして大空から一機の飛行機があらわれ、セイバーと一つになる。更にその胸部から青白い光が放たれそれに包まれたトウガは、セイバーの内部スペースに取り込まれた。「グラーン・セイバー!」
トウガと文字道理一体となり二回りも大きくなったセイバーはそう名乗りをあげた。
「死んでいただきます」
グランセイバーは、大きく振り上げた左手を敵の機体の胴体…すなはちコックピットへと突いた。
「た、助けてくれぇ〜」
テロリストの最後の言葉はおそらく、そういった類のものだったのだろう。もはや粉塵と化した彼にだずねる事はできないが…
「この力…素晴らしい…」
戦闘が終わり,全員がトウガのところに集まっていた。
「ありがとう,トウガ。来てくれて」
と,これはミスティルだった。ミスティルは,トウガをガンマとグレイに紹介した。
「俺はガンマという。よろしくたのむわぁ」
面倒くさそうな口調で,トウガよりも,頭1つ分ぐらい背の低い,長い赤毛の男がそう言ってきた。暑苦しい奴…トウガはそう評価した。
「僕はグレイ。よろしくお願いします,トウガさん」
・・・どこか,陽気で,かつ頼りなさげな声で,トウガよりも一回り小さな金髪緑眼の男の子が言ってきた。見た目もまた,陽気であるのに頼りないような,そんな印象を受けた。
「あまり気安く話し掛けないで欲しいものですね…」
トウガは,二人の言葉にそれだけ応えた。
「どーでも良いけどヨぉ・・・この機体,どこの物かわかるんか?」
話を切り出したのはガンマだった。
「ここではちょっと・・・宮殿での方が萌えると思うから・・・私が持って帰るわん」
そう,ミスティルが応えた。
「テツダッテヤロウカ?」
セイバーがたずねる。実際,セイバーが一番損傷率が低いので,持って帰るのならばセイバーのほうが適していたからだ。
「いえ,あなたは,マックスバトラーとガンカイザーのサポートをお願い。恐らく,宮殿まで帰れそうにないから」
と,ミスティルは笑ってそう応えた。
「マァソ、ウイウコッタ、タノムワ…」
と、マックスバトラー
「お願いします…」
これはガンカイザー。
次回 Chapter.4 「てきとうな存在」
にブレイブ・フォース!