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ROBOT SAGA

SPACE PORT
極悪勇者ヴァルセイバーX>Chapter.1 真似されし者

 


高度な科学は、魔法と区別がつかない……誰が言ったか、そんな言葉がよく似合う情景を、青年は見ていた。

  人をどことなく遠ざける、闇のような雰囲気を持つ長身痩躯のこの青年……トウガは、今、見たこともない世界にいた。

 「ここは何処なのでしょうか?」

 ……当然の疑問であろう。眩い光に包まれたかと思うと、地平線・水平線の類が、何処にも見えない、その代わり遠くに巨大な壁のようなものが見える。そんな大地に立っているのである。つまり、極端に閉鎖された空間……ちょうど、サイコロの内側のような……に彼は今いるのである。

 「なんなのですか?」

 今、彼の目の前にある「それ」は、彼に魔法の存在を訝らせた。巨大な人が、彼の目の前にそびえたっていたのである。いや、実際にはそれは人とは言えなかった。その巨人は、金属でできていたのである。見たところ、まったく動きを見せないその巨人は、まるで自然の一部の様に、静かにたたずんでいた。

 「ワ、ワタシハ、セイバー、アナタヲマッテイタ」

 「…っ!?」

トウガは慌てて声の主の気配を探った。腕には絶対の自信があるトウガは、相手の気配を感じた。

 「アナタヲマッテイマシタ」

 「…ロボット…?!です・・か?」

驚いたのも無理は無い。彼が見たのは5〜6メートルのロボットなのである。しかも、目の前でしゃべっているのである。

「アナタノナマエヲオシエテクダサイ」

そのロボットの無機質な呼びかけに、答えてよいものかと一瞬訝ったが、彼はとりあえずそれに答えることにした。

 「トウガとでも名乗っておきましょうか」

 「トウガサマ…ワタシニツイテキテイタダキタイノデスガ」

 「…しかたありませんね」

仕方なく、彼はロボット…セイバーの後について行った。周囲や、セイバーを警戒しながら…。それは、結局単なる徒労に過ぎなかった。警戒するようなものがなかったのである。

結局、一言も言葉を交わすことなく、トウガ達は、大きな街へとやってきた。商店街が建ち並び、人の往来も多い。活気のあふれる、いい街である。

 「トウガサマ、ココデス」

セイバーは、街外れのある建物の前で立ち止まり、トウガに中へ入るように促した。その建物は、見たところ、誰かの家のようだった。

 「おや?お客さんですか、セイバー?」

中から、のんびりした声が聞こえてきた。・・・どうやら、この家の主人らしい。どう見ても、さえないおじさんにしか見えないが・・・

 「ソウデス。カレデス」

 「これは、挨拶が遅れまして。私は、セノ・クラニスと申します」

 「・・・トウガと名乗っておきましょう」

 「トウガさんですか・・・いい名前です」

セノは、実に感慨深く、うんうんとうなずいている。

 「・・・事情を説明して頂きましょう。ここは、いったい何処ですか?何故、わたしはここにいるのですか?」

 「・・・ここは、”イベリア”といいます。あなたは、ここに、召喚されたんです」

 「・・・まさか悪を倒せとでも言うのですか?」

トウガは、依然憮然としながら、冗談めいて聞いてみた。

 「・・・似たようなものですよ、実際」

その答えは、セノから出てきた。さっきとは違って、鋭い目つきで、セノは語り始めた・・・

 「『予言』によると、この世界は、遅くとも一年後に、崩壊の危機に直面するそうです。何が原因かは、わかっていませんが、それに立ち向かう戦士の「ヴィジョン」もまた、同時に見られたそうです。そこで、この国・・・ウール100%王国の政府は、『戦士』となり得る者の『召喚』を決定した・・・というわけです」

 「随分と勝手な話ですね?」

 「『予言』については、信用性は、かなり高いですよ。しかし、不確定要素が多いので、その『予言』を変セイバーことは可能です」

 「そのために・・・わたしはここにいる・・・という訳ですか?」

 「・・・そういうことです」

 「・・・・・・」

トウガは、それ以上言葉を続けることができなかった。実際、途方もない話なのであるから、彼の困惑も、当然であるといえた。

 「・・・この話、受けるかどうかは、あなたの意志にかかっています。どうしても駄目な場合は、私かセイバーにいってください。但し元の世界に送還はしません」

 「・・・その話、断ります」

 「わかりました。」

 「・・・しかしこれからのことは考えなければならないでしょう」

 「・・・トウガさんの部屋は・・・そうですね、セイバーの部屋の隣を使ってください。セイバー、案内してやってください」

 「コッチダ」

トウガは、セイバーに導かれるまま、部屋に入った。そして、ベッドに突っ伏して、

(・・・自分勝手な話ですね)

などと、考えていた・・・・・・。


 ・・・っごおおぉぉぉうううぅぅぅぅぅぅん!!!!

 ・・・異変は、まさに始まったのである・・・。

 ・・・どこかで、何者かが蠢いていた。それが何者か・・・それは、人たるものには、理解することすら許されないものだった・・・。

 「それ」は、静かに、「時」を待っていた。自らが、「滅び」を撒くその時を・・・。

 ピシッ・・・。

 「何か」が、軋んだような音を立てる。・・・それは何者にも聞こえないが・・・しかし,助けを求める悲鳴の様にも聞こえたのかもしれない・・・。

 誰かに、気づいて欲しかったのかもしれない・・・。

 この「世界」の終末が近づいていることに・・・。

 

Chapter.2 憂いし心へ続く

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