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ROBOT SAGA

SPACE PORT
極悪勇者ヴァルセイバーX>Chapter.5 常ならぬツナ

 深い闇が,ゴンと消えた。
 まるで,全ての生命あるものを馬鹿にしているかのように,いきなり光が空を支配する。
 太陽が,突然その姿を顕す。この"イベリア"では,毎日見られるごく普通の夜明けの風景であった。
 この世界での太陽は,トウガの生まれ育った世界とは異なっていて,空のある位置に"常に"存在していて,"夜"になると,突然にその姿を消し,そして月が突然にその姿を顕すのである。
 話には聞いていたし,この世界に来てから実際に何度もこの光景を見たこともあるのだが,どうにも風情というか,趣が感じられない・・・とはトウガの弁。太陽というものは,朝には一日の始まりに決意を示すかのように燃え上がりながら西の空から昇り,夕方には,一日の終わりを名残惜しく思いながら,最後の力で更に赫く燃えながら再び西の空に沈んでゆく。そういった風景に慣れ切っているトウガにとっては,この世界の太陽は無情に思えてくるのだという。
 どうにも眠ることのできなかったトウガは,しかしながら,今日の夜明けに,太陽の慈しみの心を見たような気がしていた。悩むべきことが多過ぎて,単にそう錯覚しただけなのかもしれないが。
 そんなことを自嘲気味に思いながら,かといって何もすることもないので,トウガはしばし,"イベリア"の夜明けをぼんやりと眺めることにした。

朝の情景をしばし見つめ,お昼なってきたので,おなかが減ってしかたがない,と階下に降りる。

 「おや,トウガ。今日は早いお目覚めですねぇ」

 セノから声がかかる。その隣にはセイバーの姿も見えた。

 (・・・)

ふとセイバーの方を見やる。昨夜のあれはいったいなんだったのだろうか・・・などと思っていたら, 

「あぁ,そうそう。起きたんなら,早く出掛ける準備をしてください。今日は一緒に宮殿に行く約束をしてたでしょう?」

と,セノがいう。トウガは,口にみかんなぞ放りこみながら,

 「返事をした覚えはありませんが?」

と,間の抜けた声で訊き返す。口の中にみかんがあるので,いまいち言葉が通じたかどうかは謎だったが。

 「何を言ってるんです? よく聞こえませんよ」

 とりあえず,言葉として通じて無かったらしい。

 「どうしても、と言うなら行ってあげてもよろしいですよ。ただし、条件があります。」

と,応える。実際,条件があったわけではなく,ただ人の言いなりになるのが嫌なだけだった。まぁ,人はそれを"天邪鬼"というのだが。

 「条件は、・・・・食事が終わってから・・・と言うのはどうです?」 

あまり意味の無い条件を出し,とりあえず了解の意思を示す。急ぎ朝食と支度を済ませ,セノと共に宮殿を目指した。

「・・・なぜセイバーがついて来る?」

 セノの家を出てからしばらくして,唐突にトウガが訊ねる。今まで気づかなかったというわけでもないのだが,"何故か"気にならなかったらしい。何故今になってこんなことを訊いているのか,実際のところ,訊いたトウガ自身もよくわかっていなかった。

 「整備を受けねばならん。私も機械だからな。」

 セイバーがぶすりとしてと言う。

 「は?」

 機械が喋っている為か,セイバーの言葉にはまったく説得力がないように思える。そのせいで,正論を言っても,つい勘ぐってしまうのだった。もっとも,トウガはそれが顕著過ぎるのだが。

 「あ,そろそろ見えて来ましたね」

 そうこうしているうちに,宮殿の近くにまでたどり着いていたらしい。
 こうして落ちついて,人の目の高さで宮殿を見るのは初めてだった。
 機甲勇者の格納庫は別館にあるのだが,一目でそれを越えるとわかるほどの大きさ。プレハブなのに,そのうえ,安っぽさを隠さない隙間だらけの壁。そして何より特徴的な,どくろを思わせるような形の屋根。どれをとっても,"イベリア"における,ウール100%王国の諸悪の象徴といっても過言ではない,ある意味見事な建物だった。余談だが彼の好物は豚肉と鶏肉である。

 「もっと近くによっても良いのですよ?」

 ・・・つい見とれてしまっていたらしい。やけに近いいセノの声で,はっと我に返る。セノ達は,2cmぐらいにいた。別にセノに見とれていたというわけでもないのに内心苦笑する。

「気持ち悪いですね。少し離れていただけませんか?」

話しつつ,先を歩くセノの体を離すべく,トウガは腕を伸ばした。

宮殿につくと,衛兵が無礼に出迎える。
 勇者に,何故か彼らは無礼をもって接してくる。まぁ,いずれ見下してやるつもりなので敢えて気にすることでもないか,そう思いつつ門をくぐる。

 「整備員が居ないようだ。一度、戻る」

門を入ってからしばらくして,セイバーが口を開く。どうやら,彼の目的は達せられなかったらしい。

 「では,こちらの用事が済み次第,私も家に帰りますね,セイバー」

 ・・・。

 ひとつ頷いて,セイバーはトウガ達と別れ元来た道を戻っていた。

 「今日も,洗濯日和ですね。・・・セイバー・・・」

 セノの,そんな呟きは,しかし,トウガの耳には届かなかった。セノは密かに朝食に睡眠薬を盛っていたのだ!!

 「さて,私達は行くとしますか・・・二人っきりになれたし」

 そういって,セノは意識に無くなったトウガを連れて,宮殿の一室に入る。トウガをくまなく調べるかのように,色々しながら,目のやりばとやらを探してひたすら。

かれこれ,1時間ほどたっただろうか?ふと,トウガは目を覚ます。

 「さて,ここが,勇者のリビングルームです。・・・お茶の間と言った方がわかりやすいですかねぇ?」

 やっと開放してくれたらしい。いろいろあったせいか,トウガの顔にも疲れの色が見える。
・・・と思いきや,

 「・・・・・・どこかと思えば・・・何処です?!」

突然大声で叫ぶ。

 「何故教えてくれないのです? 今まで私に何をしたのです!? 」

 はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。

 ひとしきり叫んでから,トウガは大きく息をつく。

 「おや?そんなに息が・・・いやはや,私も捨てたものではなかったようですねぇ」

 あっはっはと笑いながら,しゃあしゃあと言い放つ。

 「ですから,そういう関係じゃないのでは・・・!? 何故・・・?」

 「まぁ,冗談はこれぐらいにして」

 トウガの抗議をあっさりと遮る。

「実際,あちこちとさわりまくったのは,貴方の造りを覚たかったからです。何時,何があるとも知れませんからね。その対策・・・みたいなものです」

 そういわれた後,トウガは言葉を失った。あきれていたと言うよりは何より,セノのぬれた光る唇が,トウガノ唇を奪ってしまっていたのである。だが,それも一瞬の出来事だった。ふっと,セノは,瞳を閉じ
・・・Zzzzz・・・
眠っていた。

 「寝た?!」

とりあえず起こし,トウガはセノと共にリビングルームに入った。


ろうそく一本程度の光量もない,暗い部屋。壁も一切なく,ただ中央に別の暗黒ともいえる,大きな穴が開いている。目を凝らせば,中に人が―――漢がいるのを見て取ることができたかもしれない。ただ,そこには他に人などはいなかったのだが。
 中の漢は,不思議な事に,地に潜っていた。いや,正確には,地中に椅子が―――木の椅子があってて,その椅子の上に座っていた・・・とでも言うべきか。そして,漢の周りには,何やら食パンらしきものが,木の板に数枚。そのうちの一枚に叫ぶことで,周囲の木盤の文字に影響を与えているらしかった。

 >貴様、何がしたい!?

 >お前はこの強化服を使って何がしたい ?

 木盤に文字を書く“それ”。漢は,手元にあるパン切れを食べながら,その問いに応えた。

 「>監視カメラにつないでくれ。敵について情報を得て、作戦を立て戦う!.」

 >.....................

 >監視カメラに繋がったぞ.

 >だが、”敵”は強しすぎて貴様などでは相手できまい。それでも戦うのか?

 しばしの沈黙の後,漢の要請に対しての回答は,このようなものだった。漢は,迷うことなくこう応える。

 「>たとえ可能性が1%でもあるなら・・・俺は・・・!!」

 漢の決意を汲み取った・・・とは言わないのかもしれないが,"それ"は即座にこう応える。

 >しばし待たれい。貴様の言う事を聞いてやる!!.

 ・・・端から見ていたとしても,恐らくこの穴での出来事は理解することはできなかっただろう。この"試練"は,ウール100%王国によってもたらされたものではないのだから,当然といえば当然であった。"虎の穴"なる"試練"。
 この"試練"は,"世界"・・・いや,"システム"によってもたらされたもの。例え,"システム"に,たいした意味がなかろうとも。もしかしたら,自らの危機を誰かに伝える為の,闘争本能の顕れなのかも知れない。もっとも,その"試練"を受けることのできる者―――<ヒーロー>たちに,どういった意味があるのかはわからないが。

・・・ドドドドドド、ズギュ〜ン!!

 「うっ!?」

 急に,強化服が弾け,四散する。漢の中の漢―――?が,床に倒れこむ。どうやら,先程の音がした時に,かなりの衝撃を受けてしまった。意識はかろうじてあるものの,体が痺れて,指一本動かせずにいた。悔しげな表情で,漢がうめく。

 「・・・まだだ・・・まだ倒れる訳にはいかない!!本当に・・・<ヒーロー>は感情を捨てなければならないのか?。だがな・・・」

 捨てたくなかった。だけら封じる。絶対の正義を込めて。捨ててしまえないということを知っているから。捨た人を,知ってはいるが・・・。

 「オヤジ・・・」

 その目を伝うものは,真に感情を持つもの以外が持ち得ない,激しい怒りの顕れだった。

 「みんな・・・戦ってる。俺だって,戦える。いつまでも,やられるだけなんてイヤだ!だから・・・俺は,諦めない!!」

 腕のブレスレットに,強いの光が宿り、彼を包む。現れたその強化服は,真紅に彩られたスーツだった。そして,再び戦うべく,力を振り絞って,ほとんど自己満足でポーズを決めていた。


「―――"ツナ"とは・・・」

 かすれてはいるが大きな声が市場に響き渡る。
張り上げたその声は,お客に向けて発せられている。あたかも,漁師に語り掛けているかのように。あたかも,あらぶる太洋に語り掛けているかのように。

 「・・・絶え間ない"大漁"の中の"漁なき時"。それは,現実問題そういうことはある。しかし・・・缶詰は,望まれた"オイル漬け"としてのあり方ではないようです。"マグロ"ならぬをツナとする・・・マグロを食べる"というのは,あるいはそういったものなのかもしれんな。」

 誰にも理解されず,一人で納得してしまっている。恐らく,同業者が聞いていたとしても,理解しないのだろうが。彼は,純粋に声を出す事を愉しんでいるのだった。

 ズキューン

 左胸に鋭い痛み。その痛みは,激しい。,彼が気を失う。今,彼が瀕死の重傷を負った。大声は近所迷惑になる。そして殺意にも繋がる。・・・その事実に気づくには,今少し時間が必要だった。むろん彼自身が生きていれば・・・・

 


次回 Chapter.6 "機甲勇者予備隊(予定)"
にブレイブフォース!!

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