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アルフォース英雄伝

〜第1話〜最後の竜聖〜〜

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若者がテーブルにつくと、その老人は、ポツリ、ポツリと、話し始めた。

英雄になりたいのか?そう良い物でもないと思うのじゃが・・・まあ若いお主らには分からんじゃろうがのぉ・・
あれは、もう何年前のことになるじゃろうか。バーザントの北に浮かぶ島を知っておるか?ほぅ、よく知っておるな。そうじゃ、ヤマトノじゃ。あの島はのぉ、昔からある一族が住んでおったのじゃ。決して目立つことな、く密かに、そして細々とな。彼らは、竜聖一族といってな、不思議な力を秘めておったそうじゃ。ちょうど魔法と同じような力じゃった。

・・・・お主、魔法は使えるのか?

その言葉に若者は首を横に振った。

 そうか、じゃが、魔法使いが、生まれたのは、15年くらい・・つまりあの覇王戦争の頃からというのは知っておるな。じゃが、竜聖の一族は、そのずっと前からその力・・・竜法を使えたんじゃ。まぁ、その一族の若者にロイというのが居ってな・・・・・


 朝の光が窓から照しこむ。

 (朝か。)

 その日は、彼にとって特別な日であった。
ベッドから起き出し、目を閉じ、大きく息を吸いこむ。ゆっくりとそれを吐き出しながら目を見開いた。

 (俺は、この日を待っていた。そう、この日の為に俺は…)

 竜聖の里は、イスティナ帝国のヤマトノ地方の山中にある小さな村である。そこで暮らしている“竜聖”一族は、一つの使命を持ち、静かに、そして外界の人々から隠れるように生きてきた。“混沌”と呼ばれる存在の封印を護ること。それがこの一族に課せられた使命であった。
“戦士”いつの頃からかこの村ではそう呼ばれるものたちは、他者の侵入から里を守り、封印の秘密を外界にもれるのを防ぐ役割をになうようになっていた。
なめし革で作られた父の肩身の鎧を身に着け、剣を手にとる。それは、彼ロイ=フォンが戦士になることを決めた日から欠かすこと無く続けてきた稽古で使ってきたものである。

 「母さん、行ってくるよ」

 『ロイ…族長さまに失礼の無いように…しっかりね』

振り返り肯き、ロイ=フォンは家を後にした。

 「貴方が死んでしまってからもう五年…大丈夫・・よね・・だってロイは貴方の子ですもの・・」

 今しがた息子の出ていった扉を見つめながらロイの母親は呟いた。彼女が息子の背中に亡き夫の姿を重ねていたことに彼女自身気づいてはいなっかっただろう。しかし彼女の瞳には確かにそれがあった。
 “戦士”の称号は、それになることを志すものが成人した後に、“試練”を受け合格し、初めて得られるものである。この試練に合格したものはロイの知る限りでは2人だけ。
 ロイの父親と、2年前から姿を暗ましたジャークという名の男
 ロイ=フォンは“戦士”となる試練を受ける為に今日この日、族長の館にいた。

 「ロイよ、おまえが今日の為に剣の稽古を欠かさなかったことは知っている。おまえならばこの試練を無事に終え、“戦士”となって帰ってくることができるじゃろう。」

族長はゆっくりとそう言った。

 「期待に添えるよう、がんばります。」

族長の言葉に力強くこたえ、ロイは向かった。“試練”の洞窟へと…
薄暗い闇の中から男の声が響いた。


 「陛下、出陣の許可をいただきに参りました。」

漆黒の鎧に身を包んだ男はひざまづき、兜を取った。背中まで伸ばしてある銀色の髪がゆれる。

 「有無、許可する。だか、良いのか?おぬしは自ら生まれ故郷を…」

陛下と呼ばれたものの言葉を遮るように鎧の男は答える。

 「総ては陛下の為に…」


 同じ頃ロイ=フォンは眠りに就こうとしていた。
 冷たい岩の感触が背中に伝わる。 
 試練の洞窟はロイの想像以上に広く、歩いているだけでも相当の疲労があった。不気味な気配が漂い、幾多の怪物が彼を襲った。
 吸血コウモリ、毒を持った巨大な蠍、中でも手強かったものは、不定形生物スライムだった。それには彼の剣がまったく通用しなかった。切り裂かれたその肉片はわずかな間に別のスライムへと再生する。おまけにそれの体液は酸を帯びているらしくたちまちに剣の表面を腐食させた。
 彼のいる場所はそんな洞窟の中でも比較的静かな場所であり、かつて試練を受けたもの達の休息の後すら見つかった。
ゆっくりと目を閉じ、体を休める。彼の作った結界の中で。

 そして1週間が流れた。
今、彼は洞窟の最深部へ向かっている。多くの障害を乗り越え試練を終えるときはもうすぐである。

 「ここが最後の扉…」

扉を開き所の眼前に広がったものは、あまりに近代的な、いや、未来的な部屋であった。

 「ここは…」

どこからか彼に呼びかける声がした。

 『我が末裔よ』

光が降りてきた。どこか暖かく、頼もしい感じのする光が。

 『我が名はルオン。最初の竜聖なり。』

 (ご先祖様・・か?)

 『竜聖とは秩序の守護者なり。汝“戦士”となり、秩序を守護せよ!』

 言葉が終わると同時にロイの体に新たなものが宿った。少なくとも彼にはそう感じられた。

 『新たなる竜聖の戦士よ…

 その時だった。激しい振動が洞窟全体、いや、世界を揺さ振った。

 「これはっ」

光は消え、あたりは静寂に包まれた。

 「!!」

 ロイが、念じると彼の体は宙を舞った。
竜法…それは“戦士”となった竜聖のみが使える超常能力。
次の瞬間、彼は里へと戻っていた。

 「いったい何が!?」

 その光景は、真っ赤に燃えている里であった。

(そうだ・・母さん、母さんは)

 母の無事を祈りつつ家へと走る。死臭が辺りに立ちこめ、いまだ燃え盛る炎は容赦なくロイに襲いかかった。
炎を、朽ち果て倒れくる家屋の残骸を払いのけ、走る。

 「母さん!!」

扉を突き破り、うつ伏せに倒れていた母を抱き起こす。

 「母さん!いったい何がっ!」

『てっ…帝国軍が“混沌”の封印を…』

 「しっかりしてくれよ母さん」

『ロイ、戦士に成れたのね…良かった…』

それが彼女の最後の言葉となり、その顔は安らかな笑顔であった。

 「か、母さ―――――――――ん!」


降神暦1999年7の月「混沌」の封印がとかれた。

悲劇は、まだ始まったばかりである。


・・・・・・・今日は、このぐらいにしておこうかのぉ
・・・老人は、テーブルの上の湯飲みから、もう冷えきったお茶をすすると、立ち上がり、そういった。

続く

 

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